ワーキングメモリとマインドフルネス心理療法(2)

 ワーキングメモリ(WM)は、前頭前野や帯状回の機能である。  帯状回の認知領域と情動領域は、相互に抑制していることは、興味深い。情動領域が活発に働いていると、認知領域を抑制する。理性的な判断(結果を推測し、適切な対処法を想起して)、行動ができない。認知領域が活性化すると、(感情的な行動を抑制しておいて)長期記憶を照合しながら、理知的な判断に基づいて、行動を選択する。認知領域が、優勢に働く時は、感情的に行動してしまうのを抑制できる。
 
 ワーキングメモリは、次のような機能である。(注1)  帯状回認知領域の活発な人は、過去の記憶と照合して、自分を省察して、自分の行為の結果を推測できるから、無茶なことはしない。すなわち、感情的、衝動的に、無茶な行動、思考をしない。こういえる。
 他者をいじめる人、非行犯罪をおかす人、心の病気になる人は、こうしたワーキングメモリの機能が衰えているとみてよい。前頭前野や帯状回認知領域の機能が衰えているだろう。うつ病については、研究がすすんでいて、容積が小さいという報告がある。
 マインドフルネス心理療法は、ワーキングメモリの機能(すなわち、前頭前野や帯状回の機能の一つであるが)を活性化するようである。感情に振り回されずに、刺激を観察しながらとどまり、すぐに軽率な(まぎらし、回避、暴力など)行動をとらずに、よりよき効果のある行動をとることを訓練する方針であるから、前頭前野や帯状回の認知領域の訓練をすることになるだろう。